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インカインチは、ペルーアマゾン熱帯雨林に分布するトウダイグサ科の蔓性常緑樹で、地域によって「サッチャインチ」と呼ばれていますが、学名は「プルケネティア・ボルビリスL.」と言います。「プルケネティア・ポリアデニア」、「プルケネティア・ウアイリャバンババナ」、「プルケネティア・ブラチボトリア」、「プルケネティア・ロレテンシイス」などの近縁の野生種があり、しばしば混同されますが、最も利用価値の高く、現在ペルー国内で一般的に栽培されているのは、「プルケネティア・ボルビリスL.」です。1989年にペルー国立農業技術研究所がインカインチに関する研究に着手しました。その中でブラジル、エクアドル、コロンビア国境付近を含むペルー国内を対象にフィールド調査が実施され、52種類のエコタイプ及び品種を収集、その後の研究で8種類が優良品種として選定されています。
インカインチが現在のように農産物として栽培が開始されたのは、今から10年程前のことで、このペルーアマゾン原産のナッツにビジネスとしての価値を見出した、自然愛好家でもありまた発明家としても知られるペルー人のホセ・アナヤ博士が、農民にアグロフォレストリー栽培(農地に樹木を植えて森林を育てながら、樹間で農作物の栽培をする)を奨励したのが始まりと言われています。その後、アナヤ博士が設立したアグロインダストリアス・アマゾニカス社は、インカインチ油を2004年のフランスSEAL国際見本市に出品し、オメガ3脂肪酸の含有率の高さが注目を集めました。同年6月には、食の都パリで開催された国際食用油コンクール『パリウォルル食用油サロン』において、オリーブオイル以外の植物油部門で金を獲得し、これがきっかけとなり、ペルーの都市部でも注目を集めることとなりました。日本では、2006年1月からNPO法人アルコイリスが、インカインチの種実を圧搾し、「グリーンナッツオイル・インカインチ」(商品名)を販売しています。
ペルーアマゾンは、標高の低い「低地ジャングル」から、アンデスとの境界に至る標高の高い「高地ジャングル」まで、世界的にも稀有な、実に多様な熱帯雨林環境が特徴です。ペルー国内には約25,000種類の植物(世界の約10%)があり、その内4,000種類にものぼる有用植物が、日々の営みの中で様々な用途に利用されていると言われていますが、インカインチも、ペルーの多様な自然環境が生み出した貴重な植物資源の一つです。
インカインチは蔓性の半木質の植物で、写真にあるように雄花と雌花を持ち、虫や風により他家受粉し、結実します。種まき後約7カ月で最初の収穫があり、一年を通じて成長を続け、毎月収穫があり、雨季に収穫のピークを迎えます。星型の莢の中には4〜9つの種実を付けますが、緑色の莢が褐色に熟すると、収穫の合図です。収穫後、種実は莢を剥かずそのままの状態で風通しの良いところに保管しますが、そうすることで、長期間に渡り品質の劣化を防ぐことができます。
インカインチの生産地の中には、道路などのインフラが整っていないところも多くあり、特に雨季には収穫物の運び出しが困難になることから、長期保存のきくインカインチは、自然環境や社会的条件の制約を受けることが少なく、ペルーアマゾンの広い地域において、適地適作となる可能性を秘めています。
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